神奈川フィルハーモニー管弦楽団第277回定期演奏会

公演日:2012年01月28日(土)
開演:14:00
会場:横浜みなとみらいホール
指揮:サッシャ・ゲッツェル
ヴァイオリン:松田理奈
ゲスト・コンサートマスター:
廣岡克隆
R・シュトラウス/交響詩「ドン・ファン」
ブルッフ/ヴァイオリン協奏曲第1番ト短調
ヴァイオリン・アンコール
イザイ/無伴奏ヴァイオリンソナタ第2番より第1楽章
~~15分休憩~~
ブラームス/交響曲第4番ホ短調作品98
ううむ、無理して行ってよかった。
「ドン・ファン」の出だしでもうこれはイケる事を確信、あの溌剌とした出だしから果敢に攻める意欲と引き締まった官能と言いますか、熱い情熱とオケから香り立つものがあるのが感じられた。
世紀末的爛熟の世界の絢爛豪華な目眩く音の饗宴、響きが次々に輝きを変えて、いつもの神奈川フィルの透明で輝かしい響きがこんなにも艶やかに潤いをもって、しかもそこここで弾けるパッションの凄まじさ。
さすがゲッツェル、ウィーン子、R・シュトラウスにはこういう響きはやっぱり似合うと思う。
ブルッフは松田里奈嬢が黒い服で華やかな外見よりも音楽を聴いてくれといわんばかりの出で立ちで奏でられたブルッフはその通り、音楽がしっかりと語りかけてくる充実の響きからたっぷり情感をたたえた演奏で、それをサポートする神奈川フィルがまた素晴らしく高品位の演奏をしていて、情景がくっきりと浮かび上がる一つ一つ丁寧にひだが刻まれたブルッフでありました。
私は今までブルッフからこんな音楽の充実を聴いたことがあったかな?。
そう自問したくなるような幸せな演奏でありました。
アンコールでも松田嬢は安定感抜群、アクロバティックな曲を歌心たっぷり丁寧に聴かせてくれました。
そして、休憩後のブラームス。
かなりテンポを揺らす、ちょっとあざとさもないではなかった気もする演奏ではありましたが潤いをもった弦は魅惑的と言うよりは儚く切なく、まるでバルビローリとVPOのような表情を見せる時もあるのだけど、テンペラメントを感じる情熱的な演奏は燦めきに満ちていたと思う。舞台から迫る音楽の迸る様子はシュナイト時代を思い出した。あの頃神奈川フィルは毎回こんな演奏を聴かせてくれていた。
とはいえ、シュナイトさんのドイツ的な演奏とは全然違う、爛熟したロマンチズムを感じる、ウィーン風のブラームス。むせるような香りが立ち上るちょっと不健康な香りのするこの演奏にもう酔いしれるしかなくて、1楽章の勿体ぶった再現部の入りのあそこ、そして弦がまたため息をつく、でもそれは運命が非情に流れてゆくような切なさを感じて、そんなことを思っているうちにたたみ込むようにコーダを迎えた第1楽章はもう危うく泣くところだった。
そしてアンダンテと言うにはちょっと遅い第2楽章がもう圧巻の素晴らしさ。ここに感じた歌と哀しさはシューベルトの世界にも通じるのではないのかな。この楽章でこんないろいろな景色を魅せられたのは初めて。1楽章で芳醇なブランデーをロックで一気に酔わされた私は、ここで濃厚で豊かな拡がりの味わいのフルボディのワインの誘惑に翻弄されて、第3楽章はいきなり目の醒めるような鮮やかさ、けど色気と品位は決して失わない。
第4楽章は人によってはアタッカのように始めるけど、シュナイトさんのようにインターバルを充分にとり再び集中してあのコラールでパッサカリアの主題を提示する。この響きに思わず目頭が熱くなる。うねるような情熱が交錯しながら憧憬に満ちた中間部の私には切なかったこと、こう言う時には私は山田さんのフルートのに右に出る人はそうはいないと思うのです。
そして第16変奏、怒りが爆発したようなそこから一気に曲は、と言うか演奏は感情剥き出しのなりふり構わないような勢いになるのだけど、その表現をする今日の神奈川フィルは爛熟した妖艶でキュートな響きで、そして輝くその目がとても鋭く、っていうかそんなふうに感じて、神への怒りの表現ともとれるってプログラムに書いてあったこの楽章、クララを幸せにできないこの境遇への切ない哀しみ、そしてその出会いの残酷さをの怒りを神へぶつけたのかどうかは知らないけど、勝手にそんな風に思ってブラームスのその哀しみを勝手に感じて泣けた。
ゲッツェルはやっぱりよく飛び上がった。でも以前ほどではない。だけど飛び上がる高さよりもテンションの高さが素晴らしかった。
その彼にオケが必死に喰らいついて行く、それをまた攻め立てる、オケと指揮者の丁々発止のやりとりが見えるような気がしてそんなスリリングな舞台を観て胸がときめき興奮した。
ヲレ様石田様、あとホルンの森さんは居なかったけど廣岡君も頑張った。
いつもより艶やかなヴァイオリンは素晴らしかった。ヴィオラの深い美しさも本当に素敵。チェロの想いのこもった歌い廻しは、あれにやられちゃうんですよ、いつも。コントラバスもよかった、量感が、もう少し響けばもっとよかった。
清水さんのティンパニ、今回はいつものシャープだけど軽めの音ではなくて私の好み。金谷さん、府川さんのトランペット、まろやかでロマンティックだった。トロンボーンも優しかった。フルートは山田さん、もうウットリ。鈴木さんのオーボエ、斉藤さんのクラリネットの冴えた風を感じる歌が好きです。
なんだか久しぶりに堪能した神奈川フィルの本来のパフォーマンス。このオーケストラはこれなんですよ。
これが聴けて嬉しい、今回は幸せでした。ありがとうございました。
ゲッツェル、第4代音楽監督なんて、ダメですか?。