小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクトⅩ フンパーディンク:歌劇「ヘンゼルとグレーテル」公開リハーサル
小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクトⅩ フンパーディンク:歌劇「ヘンゼルとグレーテル」公開リハーサル

音楽監督・指揮:小澤征爾
演  出:デイヴィッド・ニース
装  置:マイケル・イヤーガン
衣  裳:ピーター・J・ホール
照  明:高沢立生
オリジナル・プロダクション:
      ザ・ダラス・オペラ

管弦楽:小澤征爾音楽塾オーケストラ
児童合唱:東京少年少女合唱隊
児童合唱指揮:長谷川久恵

出演
グレーテル*:カミラ・ティリング
ヘンゼル:アンゲリカ・キルヒシュラーガー
ゲルトルート(母親):ロザリンド・プロウライト
ペーター(父親):ウォルフガング・ホルツマイアー
魔女:グラハム・クラーク
眠りの精/露の精*:モーリーン・マッケイ

 いつも申し訳なく思うのだけど、ゲネプロのレビューは御法度とわかっているのですが、今回は公開でもあることだし何卒お許しを。
 当初アナウンスされていたグレーテル役のバーバラ・ボニーはたぶんブタインフルエンザで来日不能、残念でありましたが、いやいや代役のカミラ・ティリングもなかなかの好演。とはいえゲネプロなので本番はもっと凄いのでしょう。
 去年はお金を払っていったのだけど、今年はゲネプロとはいえご招待でありまして、この機会を下さった方には感謝であります。
 ゲネプロなのでピット内は私服で、征爾さんも私服。
 いつもはピット内下手から指揮者の登場なのだけど今回はなぜか上手から出てきた。
 征爾さんの存在感はいつもながら凄い。
 威圧的ではないのだけど、特に今回は演目のせいか背中から感じるオーラも優しげで穏やか。そんな彼がタクトを持たない手を静かにかざすとあのホルンが山びこのように聞こえて物語の始まり。
 この角笛に導かれる響きは霧が晴れて目の前に拡がるパノラマそのもの。
 筋書きはもちろんあの「ヘンゼルとグレーテル」なので、たとえばプッチーニやイタリアのベリズモ・オペラなどよりは全然マシで安心して楽しめる。
 オーケストラはウィーン・フィルのペーター・ヴェヒターを初めとしていつもながら腕に覚えがある老練ベテランのヴァイオリンの豊嶋泰嗣やフルートの工藤重徳、オーボエの宮本文昭さんはもう笛は吹いていないはずなのに今年も顔を見せている。こんな豪華メンバーをセカンドに据えて若手塾生をトップに据えるという混成部隊で、なかなかの響きでありまして、でもここで神奈川フィルの響きを懐かしむのは贔屓の引き倒しと言われても仕方がないけど、こういう風にきくと神奈川フィルもやっぱりいいなと思う。
 序曲が終わって幕が開き、舞台上は絵本の世界そのもの、美しさにハッとする。
 ダラスから持ってきたこの塾長のウィーンの国立歌劇場の音楽監督である塾長にふさわしい豪華な舞台装置はもうトラディショナルそのもの、これも全く安心してメルヘンの世界を楽しめる。
 そんな舞台の中でヘンゼルとグレーテルの二人のやりとりも、らしくってこの童話の世界の中の出来事に現実かと思うように錯覚してしまうほど。昔、母親にこの絵本を読んでもらった時の事を今まさか思い出すとは思わなかった。
 お母さん役のプロウライトの歌、ゲネプロなのにみんな結構頑張って歌っていたけどこの人はひときわだった。
 演技はみんな達者でメルヘンを演出して、お父さんがお酒を飲んでいっぱい買い物をして家族の喜ぶ顔を思い描きながら”ライラララ~ぃ、ライラララ~ぃ”と来るあたりはなんだか意地らしくって切ない。
 眠りの精が出てくるあたりは舞台も本当に美しかった。
 ここで休憩で後半、ヘンゼルとグレーテルの森の目覚め、舞台装置の美しさとライティングの妙でもう非現実へと一気にトリップ。
 美味しそうなお菓子もおうちもきれいで、そこに出てくる魔法使いのおばあさんのグラハム・クラークは私的にはこの日一番のお気に入り。コミカルで裏声かどうかわからないけど歌もうまくってもうケッサク。
 豪華な編成のオーケストラもこの辺ではもうウットリするくらい素晴らしい。お菓子のワルツなんて本当に素晴らしかった。
 そして呪いが解けていくあたりなんて音楽の優しさに包まれて、まだ私に神様が身近だった頃の遙か昔に感じた真心の幸せを思い出してちょっと胸が熱くなったりもした。
 そして”ライラララ~ぃ、ライラララ~ぃ”と歌いながら子供達を捜す父親と再会する時の家族の団らんを観ていたら羨ましくなった。
 征爾さんも去年みたときよりも振りが小さくなっているように感じたのは曲のせいか、例の体調のせいかわからないけど、でも造っている音楽はなんだか若いなぁと思う。
 最初から最後まで結婚式に出てくる豪華なデコレーションケーキのような舞台装置にそれを演出するゴージャスなオーケストラ、そして楽しそうな出演者に非現実とはいえ、本当にあまりに非現実的に楽しい空間でありました。
 今日も先日に引き続きSchweizer_Musik 先生にお付き合い頂き感謝でした。
 この日の裏で行われていたアマオケのコンサートにも後ろ髪を引かれるようなおもいをしつつ、楽しいひとときでありました。
by yurikamome122 | 2009-07-19 23:20 | コンサート | Trackback(3) | Comments(4)
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Tracked from 鎌倉スイス日記 at 2009-07-21 15:38
タイトル : 小澤征爾の音楽塾のゲネプロ
昨日は、yurikamomeさんのご厚意により、小澤征爾の音楽塾のゲネプロを聞くことができた。若いオーケストラ団員がエンゲルベルト・フンパーディンクの歌劇「ヘンゼルとグレーテル」の伴奏を小澤征爾の指揮で懸命にやっているのを見るのは大変楽しいものであった。 yurikamomeさんと隣り合った二階の最前列の席で、隣が偶然神奈川フィルの理事で、神奈川フィルのことなどを公演前や幕間に話したりして楽しい観劇となった。 演出はダラス・オペラのプロダクションが使われていたので、なかなか豪華だったし、とても面白......more
Tracked from でかけよっか at 2009-07-23 22:24
タイトル : 小澤征爾音楽塾 オペラプロジェクトⅩ
若手音楽家の音と、一流の出演者、演出家、舞台装置、そして小澤征爾の組み合わせは最高でした。...more
Tracked from オペラの夜 at 2009-08-10 20:52
タイトル : フンパーディンク「ヘンゼルとグレーテル」
<ザ・ダラス・オペラ製作プロダクション>2009年8月1日(土) 15:00/アクトシティ浜松指揮/小澤征爾小澤征爾音楽塾オーケストラ東京少年少女合唱隊演出/デヴィッド・ニース美術/マイケル・イヤーガン照明/高沢立生衣裳/ピーター・J・ホールヘンゼル/アンゲリカ・キルヒシュラーガーグレーテル/カミラ・ティリング父親ペーター/ヴォルフガンク・ホルツマイアー母親ゲルトルート/ロザリンド・プロウライト魔女/グラハム・クラーク眠りの精&露の精/モーリーン・マッケイ 今年......more
Commented by Schweizer_Musik at 2009-07-21 16:00
お誘い頂き、ありがとうございました!!
楽しいひとときでした。小澤征爾の指揮の姿にも久しぶりに見ることが出来たことは望外の喜びでした。
昔、サンフランシスコ交響楽団と来日したコンサートの時と同じ、颯爽とした、細かなアインザッツもさすがというべきもので、変わったのは頭髪が真っ白になってしまったことくらい…(私もですが…笑)で、私もがんばらなくてはとつくづく思った次第です。
しかし、ドイツの誰もが知っている子供の歌を素材としてそれをワーグナーのオーケストレーションで飾るとああなるのだと痛感させられましたが、他の曲はどうかと調べると「眠れる森の美女」などの管弦楽作品があるようで、ナクソスにディートリヒ・フィッシャー=ディースカウのお兄さんだったか従兄弟だったか忘れましたが、マルティン・フィッシャー=ディースカウ指揮でナクソスにあるので、時間のある時にでも聞いてみようと思っています。
Commented by yurikamome122 at 2009-07-21 20:47
Schweizer_Musik先生、お付き合い頂きありがとうございました。
昔から鮮やかなキューでしたが、いまでも楽員さんに言わせると振りすぎで”うざい”くらいなのだそうです。
それにしてもシュナイトさんと同世代なんですよね、若々しさにはその精神力も脱帽です。やはり世界レベルの人は違います。
ワーグナーのオペラの童話版みたいな響きでしたけどでもあのメルヘンなストーリーにマッチして結構楽しめてしまいました。
筋書きもヘンテコなヴェリズモ・オペラよりも数段マシでその意味でも安心して楽しめました。
フンパーディンクの他の曲、ご案内ありがとうございます。
私もちょっと聴いてみることにします。
ご丁寧にありがとうございます。
感謝です。
Commented by Pilgrim at 2009-08-10 20:52 x
 こんばんは、「オペラの夜」です。

 小澤は齋藤メソッドの申し子ですから、振り過ぎるのは、今だに師匠の教えを守っているのだとも考えられます。ウィーンフィルやサイトウ・キネンを相手にしても、塾生に対するように細かく指示する事こそ、小澤の小澤たる所以と思います。
Commented by yurikamome122 at 2009-08-11 03:44
Pilgrimさん、はじめまして。
征爾さんが振りすぎると受け取れる文章を私が書いてしまっていたんですね。
私の印象ではこの日は振りすぎかどうかよくわかりませんが、その存在感の音楽的なことには感銘を受けました。
また、彼の振りは随分以前(20年以上前)と比べるとそうではなくなってきたように私には感ます。
さらに今年は入院したりして去年よりは振りがおとなしいような気はしました。
キューといえば、この前亡くなった若杉さんも結構マメに出す方で、そしてそれが征爾さんのようにつられてそう演奏してしまうような感じではなく、自然に導き出すような印象を客席からは受けましたね。
私には客席からは気になりませんが征爾さんの振りすぎはサイトウキネンではオケから叱られるそうです。
征爾さんは、「オレにそんなことをいうやつはお前らしかいない、ウィーンだってベルリンだってオレにそんなことはいわない」といっているそうです。
そんな話が聞けるくらいですからやっぱり振りすぎなんでしょうね。
でも客席としてはいい音楽を作ってくれれば大満足ですよね。
コメントありがとうございます。
感謝です。
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