ハイティンク指揮、アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団でマーラー交響曲全集

c0021859_1332641.jpg この全集は美人の薄化粧のような演奏、それもとびっきりの美人の。
 何が美人かは、もちろんマーラーだしアムステルダムのコンセルトヘボウ大ホールで響くコンセルトヘボウ管弦楽団だし、ピチピチして活きの良さはもちろん30代から40代前半のハイティンク。
 豊満で爛熟した色気をまき散らす演奏も悪くはない(ハイティンクも後年の録音ではそうなっていた)し、ピリオドのアイディアを取り入れたすっぴんのロリータ趣味のマーラーもそれはそれでありかも知れないけど、若さと気高さを備えてナチュラルなこの演奏の魅力は取り憑かれると虜になりそう。
 古い録音で、一番古い録音は1番の62年、コンセルトヘボウ管弦楽団就任後2年目のハイティンク弱冠33歳。
 LP全集では第1番は恐らくはこの全集用に71年の8番の8ヶ月後に再録音された72年録音が納められていたので、CDで全集を出すにあたりなぜLP全集で一番録音が早かった3番の4年前の62年が収録されたのかは不明なのだけど、若さが前面に前に出たような62年のこの録音もなかなかの聴き応えで、なんと言ってもこの録音の魅力はオケの美しさ、響きの深さ、そして合奏の素晴らしさ。いろいろな音が全てジャスト・オン・タイムで響きが空間に音で構築物を作る、そして次々現れる建築物の偉容は聴く方の悦びがわき上がり、これがアムステルダムのコンセルトヘボウ管弦楽団だった。
 69年録音の7番は後に82年に再録音するものも魅力的なのだけど、こちらも輝かしい。
 70年録音の5番の冒頭のショッキングな響きはこの楽団のものだと思うし、5楽章の構築的な音の流れはホールの響きの中でドッシリと組み上げられてゆく。
 3番や4番など高い合奏力の美しさと響きの深さの中で、ハイティンクがごく自然に音楽を彫り刻んでゆく。
 2番や8番などの合唱が大規模なものは録音のプレゼンスが自然なのでホールに響く大合唱団のスケール感と繊細さに圧倒されるけど、表情は瑞々しくいかにも自然。

 ハイティンクのマーラー全集は国内でLPで発売されたのが76年以前のいつだったか忘れたけどそのあたりだったと思う。その頃の評判はもうハイティンクは最悪で、能なしの毒にも薬にもならない、コンセルトヘボウ管弦楽団の伝統を全てひとりでぶち壊した大罪人のような言われ方をしていて、その彼が66年から72年まで6年掛けて録音した全集。
 あの頃マーラー全集など、もう全員亡くなったけどバーンスタインの旧盤、クーベリック、ショルティ以外はこの今日唯一存命のハイティンクしかなかった。大体全曲聴こうなどと言う酔狂な人はそう多くなかったし、国内でたとえば7番など実演で聴いた人は生きてる人は3000人いなかったのではないか?。
 その頃にこの全集をこのクオリティーで作った心意気、それがそっくり演奏に現れている全集だと思う。

 ただ、たぶんこの全集を評価するかどうかは、背景とのコントラストと薄化粧の美人を肌のきめ細かさまで聴けるかどうかが大きなアドバンテージになっていると思う。

 さてさて、こんどはこれからレスピーギ聴かないと。

by yurikamome122 | 2015-04-12 13:04 | 今日の1曲 | Comments(0)