ヴィルトゥオージ・デル・カントの演奏でロッシーニの弦楽のためのソナタ全集

c0021859_1620223.jpg 美食家ロッシーニってその後に自ら料理人になるほど美味しいものには拘ったらしいのだけど、この「弦楽のためのソナタ」がとってもチャーミングで、全6曲がケーキバイキングのように並んでいるワケなのです。
 モーツァルトやサン=サーンスなんていう子供のうちから恐ろしくできるヤツもいたのだけど、このロッシーニもその口で、この曲集は12歳の作。時折きこえる後のオペラのようなところなんてついつい手を止めてしまう。最後はロッシーニ・クレッシェンドもやっぱり12歳くらいの少年のような雰囲気で登場。
 この曲集、多少の恥ずかしさもあってか後にロッシーニ自身で酷評するのだけど、聴いてみれば伸びやかな歌心に純真さと無邪気さが雨で洗い流された空気の澄んだ梅雨の中休みのまぶしい光に負けない輝かしさと魅力があったわけで、やがてつい聴き惚れて止まらなくなってしまった。

 いろいろなアンサンブルが録音していて、カラヤンやイタリア合奏団なんて弦楽合奏でやってるんだけど、カラヤンのこの曲の奥底の、たぶんロッシーニ自身気付いていない心のヒダを丁寧に洗い出して、そして多少堀を深くして整えた演奏はそれはそれで大変聴き応えがあるのだけど、やはりオリジナルの四重奏の方がなんたって透明な響きが大人ではない無垢な少年の感じだし、やはりきいていて音楽が舞っていると思う。

 で、この「ヴィルトゥオージ デル カント」の演奏、チェロは生クリーム、濃厚でいながらもたれない大人の甘さ、ヴァイオリンがクッキーにトロピカルフルーツってところですか。
 そしてコントラバスがシフォンケーキで、時々存在感のあるソロや歌い回しを披露しながらドッシリと構えた貫禄、いいですなぁ、このアンサンブルの心地よさ。
 皆さん普段はオケのメンバーだったりソロ活動をしたりの方たちだけど、音色と豊かな残響を伴った響きがすごい魅力的で、それぞれの音が優美な線を描き、舞い、そして綾となり紡がれる。それらが極上ケーキのようについついと手を伸ばしたくなるような粋でキュートなワクワクするような香り、彩り、梅雨の中休みの澄んだ空気のまぶしい光と爽やかな風にピッタリ。
 この曲のオリジナルであるはずの弦楽四重奏の録音は実は結構貴重なんじゃないのかな。それに、なんたってこのおしゃれな曲集はこんな時には是非聴きたい贅沢な1枚でありました。

by yurikamome122 | 2015-06-22 10:54 | 今日の1曲 | Comments(0)