神奈川フィルハーモニー管弦楽団 第280回定期演奏会

公演日:2012年04月20日(金)
開場:18:20
開演:19:00
会場:横浜みなとみらいホール
指揮:金聖響
アルト:竹本節子
テノール:佐野成宏
マーラー/交響曲第10番嬰ヘ長調より第1楽章“アダージョ”
~~休憩~~
マーラー/交響曲「大地の歌」
新シーズンスタート乾杯式
J・S・バッハ:無伴奏チェロ組曲第1番 ト長調 BWV1007より“サラバンド”
山本裕康
アイルランド民謡:「ロンドンデリーの歌」
石田泰尚
神奈川フィル新シーズンのスタート、一発目は初っぱなはシュールでロマンティックに非現実への入り口、マーラーの第10交響曲のアダージョで始まり。
オケは14型ステージいっぱいに並んだオケは壮観で、そこから響く音楽に誘われるのは遙か彼方、彼岸へ。
正直言って、私はこの曲を神奈川フィルで何度聴きたいと思ったことか。
この繊細で透明な弦がすすり泣き戦慄きながら時に嗚咽し、そして煉獄を包む不気味な赤い空のような、流れる生暖かい空気のような金管木管のクラスター。
そんな夢見た響きが今ここにある。思った通り素晴らしい、中程に来るシリアスでシュールなチェロのソロは不気味かつ甘い。
その後に登場するヴァイオリンのソロの不気味な妖艶さは愛するものに憧れながらそこにあるものは抜け殻であるようで、それを嘲笑するかのような美しい木管のさえずり。
それら全てを愛おしむような豊かな音楽の流れ。
そんな音楽を最高に聴かせる我がオケは寄せては返す波のように呼吸を繰り返しながらユラユラと幻想も見させてくれる気分になるのは、重なり合う中に顔を出す様々な楽器のかき消されないそれぞれの楽器が絡み合う乱雑さ猥雑さ、そしてそれがもう既に幻になってしまった哀しみを強く感じたからで、例のあのクラスターの絶叫はもう哀しさと寂しさと絶望がこみ上げて、それでも響きはあくまで透明。それは流れる涙のようでありました。
これは大地の歌でも感じたけど、この大音響でもすべてがきこえる美しい透明感は、恐らくはセルとクリーヴランド管弦楽団を連想するけど、美感の上ではこちらが上なのではないか?。私はこれこそ自分が理想とするマーラーの響きだと思った。
そして、それら全てがもうこの世に存在しない追憶のなかでしか出会うことが出来ないどうしようもない時間の流れと運命を印象づけて静かに、白雲のようにホールから消えていったのでありました。
この、あまりに人間的な、あまりに切ない音楽を、あまりに優しくあまりにスマートに聴かせてくれた彼ら。
最後のヴィオラで奏でられる切ない笑顔には涙がいっぱい。
思った通り、このオケで聴くこの曲は素晴らしい、長年の夢が叶った歓びとあまりの哀しさにしばし動けなかった。
休憩後の「大地の歌」はもう冒頭から全開で金の紙吹雪を吹き上げながら、ホルンの雄叫びも勇ましくも哀しみを湛えて、テノールの佐野さんの目一杯の絶叫から始まる運命の瓦解はとてもロマンティック。
前半よりも更にオケは歌い、叫び、語り、そのアグレッシヴな美しさはオケのいろいろな楽器がとってもいろいろな表情でそれこそ雄弁だったりおしゃべりだったり色っぽかったり愛らしかったり、そんな様々な楽器の響きが美しいモザイクを緻密に並べたまるでアラベスクのように繊細で、しかも鮮やかに圧倒的に迫ってくる。
私はマーラーってそんな緻密さといろいろな楽器の旋律が絡み合う、浮かび上がる面白さだと思う。それを教えてくれたのは若杉さんだったけど、残念ながら彼のマーラーは神奈川フィルでは「巨人」しか演奏されなかった。
でもあの頃よりも数段レベルアップしたこのオケからファンとして私の自慢である様々な宝石たちのような色々なパート、楽器のプレーヤーたちが妖しくも神秘的に、キュートで透明に聴かせてくれた。
スカッとした歌心で一直線に心の哀しさを叫び訴える佐野さんも、リリカルに包み込むような歌でしみじみ語る竹本さんも心に残り、「告別」での最後、マーラーが自分で詩を付けた部分の竹本さんはリリックソプラノの面目躍如、期待通り泣かせてくれた。
残念だったのは第1楽章、あの突然猿が現れる場面で佐野さんの声がオケにかき消されてしまったこと、だいたいオケが厚すぎるのでベルティーニも若杉さんも結構苦労をしていた。
ステージ上は新顔もいて、もちろんコンマスはヲレ様石田様なんだけど(素晴らしいソロをいっぱい聴かせてくれた)、小宮さんリードの2ndも繊細で透明。前半から大活躍の柳瀬さん率いる魅力的なヴィオラの鳴き節にはメロメロ。
それからチェロは勿論山本さんが君臨。都響時代から彼を楽しんできた身としてはパワーアップしたソロの素晴らしさ、見事さが嬉しい。そしてチェロのパートの歌の豊かさに包み込まれる。
コントラバスは新顔がいたけど支えるような低い歌が時に聳え、時に艶やか。
森を感じる冴えた音色の木管たちは先ずは大見さんのピッコロの見事だったことと鈴木さんのオーボエが素晴らしい。フルートに君臨したのは江川嬢。透明な冴えた響きとテクニック。マーラーはあれを尺八でやりたかったんだろうなぁ。それにしても隣に座った山田さんとメロディーを受け渡す場面、この二人の音色がこんなに違うのかと改めて驚き。
あとはファゴットだよねぇ、魅力的だったのは。
クラリネットは斎藤さん。
ブリリアントで輝く金管ではホルンにも新顔、この曲にふさわしい音色が見事、拡がりと神秘を感じる響きでさすが。トランペット、三澤さんは頑張った。
それとトロンボーンの深くあたたかい響き。
清水さんのティンパニも最高、そして平尾さんのシンバルの音色もキレもあのテクニックは素晴らしい。今回は重田先生がいなかった。
それから琵琶になったり呟いたりのハープも、琵琶だったり琴だったりのマンドリンも 星屑のようなチェレスタも秘やかだけど大音響よりも胸に響く。
やや早めのテンポでもありそれでも1時間近くはタップリあったはずの「大地の歌」なんだけど、この魅力的な演奏はそんな長さは全然感じない、あっと言う間の1時間でありました。
終演後は恒例(になりつつあるらしい)新シーズンスタートの乾杯式。お歴々の挨拶のあと、オマケは豪華だったのは、新CDを出した首席チェリスト、我らが山本裕康さんがバッハを、そして我らがソロ・コンマス、石田泰尚さんの「ロンドンデリーの歌」。
まさかここでこんなオマケまでもらえるとは。
そんなわけで、ホールをあとにしたのは夜も10時を過ぎようとしていたのだけど、そのまま関内の居酒屋になだれ込み、新たな仲間も加わり夜も更けるのも忘れていいコンサートのあとは飲んだくれたわけでありました。
お付き合い下さった皆さん、ありがとうございました。
さて、来月は「指環」ですわ、これも夢見たプログラムであります。
またまた遅くまで飲んだくれの予感。
この素敵なオケ存続のため、神奈川フィルブルーダル基金ににぜひご協力お願い致します。
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