安井式アンプの試聴が横浜ベイサイドネットでできるとMJ誌9月号にあったので聴いてみる。

 安井式の最新のアンプは7月から連載しているMOS-FETを使ったバイアスを除くとたった4石のパワーアンプ。出力は20Wと小ぶりのものを発表しておいでだった。
 それが横浜ベイサイドネットで視聴可能とのこと、MJ誌9月号の安井先生の記事中にあった。
 横浜の関内駅からも桜木町駅からもどちらからでも徒歩5分ほど。サリュートビルのエレベーターに乗りビルの7階に着いてエレベーターを降り静かな廊下に出ると、すぐのお店は、静かに音楽が鳴っている。
 お店では店長の西川さんがいつものように迎えてくれて、窓の向こうのみなとみらいの景色を眺めながらのオーディオ談義をしながら、お店は自作の好きな人にはお菓子のおうち的な面白そうなものがたくさんあって、その奥にはシステムが陳列してある。
 そこには、確かに製作記事にあったそのものが鎮座ましましていて、いくつかのスピーカーで視聴できる。
 プリアンプはベイサイドネット・オリジナルのキット化予定のプリアンプに接続されていて、聴けばこのアンプも安井テイストがたっぷりとのこと。
 純正ではないけどもかなり安井式のオリジナルに近い状態で視聴できる。
 スピーカーには、ユニットだけで10万円近くするAudio Technologyの20㎝ウーハーに、これまた1本20万もするScan-speak Illuminatorのベリリウムツィーターのシステムや近々にキット化予定の小型スピーカー。
 それに加えて、Wavecorの11.8cmグラスファイバーコーン ウーファーにDayton AudioのAMT3-4という「エア・モーション ツィーター」と言っているけど、昔ESS出だしていた「ハイルドライバー」と同じツイーターを使い、安井式ネットワークを搭載したスピーカーでも試聴ができる。

 印象は記事中にあるとおりに3次元的な拡がりと響きの充実感は出色。20Wの出力のパワー不足は全く感じさせないどころか、力強さは20Wと言う印象から受ける以上の低音の力強さにパンチ力。
 安井式ネットワークを採用したスピーカーとの組み合わせでは、静寂の中から立ち上がる音の反応の早さと残響の豊かさ、まるでその場にいるみたい。
 演奏に加えたれた微妙なビブラートやタッチも結構感じられる。ピアノを聴くと、目の前でピアノの弦を叩くハンマーが目に見えるよう。それでいて空間のスケール感が凄いし、とにかくスピーカーを意識させないし音楽がうねっている。
 音のキレと透明感、録音会場の壁反射による会場のボリューム感がリアリティーあった。
 とにかくリアリティーが凄い。
 西川店長曰く、聴き疲れがしない音とのこと。たしかに聴き疲れしないリアリティー、プロの演奏者にこそ聴いてほしい演奏の微妙なニュアンスが聴き取れる。

 スピーカーは横浜ベイサイドネットオリジナル製品は、西川店長のアドバイス込みでオーダーメイドが可能。また、このパワーアンプ、横浜ベイサイドネットでキット化を検討中。でもそれまで待てない人は製作依頼もできるとのこと。

 写真のラックの最下段が記事中にあった安井式20Wパワーアンプ、そしてスピーカーの内側が安井式ネットワーク内蔵のスピーカー。その外側がユニットだけで方チャンネル30万のシステム。ラックのすぐ傍が小型スピーカー。
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お店のリンクはこちら、お近くにお越しの際は一聴の価値あり。
横浜ベイサイドネット

by yurikamome122 | 2015-08-20 17:09 | オーディオ | Comments(0)

パワーアンプの製作

c0021859_17511316.jpg パワーアンプの製作を先ずは始めることにする。
 先の考察で、いにしえの回路であるクロスシャントを基にしたと思われる金田式アンプの回路がどうも私には対称とは思えず、しかも思ったよりも歪み率が低くない。アンプで歪み率を0.数パーセント下げることにこだわるつもりは全くないのだけど(そんなこと言えば、スピーカーの歪みやフォノ・カートリッジの桁違いの歪みなどどうするのかと)ただ、対称を謳っているのであれば通常の回路よりも歪みが低くなってよいはずなのになっていないことに若干の疑問の余地を個人的には残すわけだ。
 私は個人的見解として、斬新で独創的のように見えて、実はいにしえの回路をアンバランスでの転送に対応させるため、結果的に不完全になってしまったように感じなくもない。
c0021859_1754836.jpg 対して、構造上、全く完全なコンプリメンタリーの素子を造るのは不可能と言うことは承知の上で、動作点での特性を厳選したコンプリメンタリー素子を採用し、上下対称で全く無理のない中で、幾つかのノウハウがさり気なく盛り込まれている安井式に私としては惹かれる。(音でも、私が聴く限り安井式の方が立ち上がりが鋭く新鮮で、遙かに豪快で率直で透明なリアリティーを持って鳴っていた。金田式は豪快に鳴っていて、それはそれで説得力があったのだけど、ただ何か作為的なものがあるように感じた)
 そして、安井先生の回路がもうかれこれ数十年前から開回路特性の向上による音質に着目されていて、現在、それだけではなく、可聴帯域内の位相特性の向上に着目しておいでで、アンプの裸特性で20kHzでも位相のずれが十数度から数十度以内で収まっている。これの聴感上に及ぼす影響も体験してみたかったし、また電源まで含めてNON-NFBであることも興味があった。歪み率が若干なりとも金田式より劣って見えるのは、このNON-NFBであるが故というのはもちろん想像に難くないし、それでいてこの歪み率であれば、アンプそのものの素性は大変によく、NFBをかけて見れば見かけの諸特性はとても良くなることは明らかだと推察される。

c0021859_17572580.jpg あとは出力がどれだけあれば良いかなのだけど、1m離れたピアノの演奏の音量が大体70~100㏈と言われているので、リスニングポジションとスピーカーの距離が約2mくらいが普通ですか?。
 とすると家のスピーカーの能率が約1Wで90㏈/mということは、0.3W~4W位と言うことになって、例えばクラシックのオーケストラの場合、最大で120㏈位ですか、ということは60W位必要で、実際のダイナミックレンジはもっと大きいでしょうからピークで100Wほしいと言うのもあながち闇雲な話ではないのだけど、市販のソースを聴く限りそんなものは存在しない。
 第一、都会のど真ん中の共同住宅の自分の部屋でそんな大音量はあり得ないので、20Wもあれば全く充分という計算になる。

 と言うわけで、安井式の制作に取りかかる事に決定。MJ2012年11月号、12月号掲載の40Wパワーアンプに決定。
 パーツや基盤などは安井先生のオリジナルでは、既に手に入りにくいものもあり、安井先生のご協力をいただき完成。

c0021859_549018.jpg 中でも安井先生のアイディアで、パーツの方向性に言及するところがあり、その原因に抵抗のL分と電磁波の関係があり、その点の対策として抵抗などのパーツのシールドを勧めておいでで、正直言って、これにはシビれた。
 安井式アンプは理研電具のリケノームを使っておいでで、(炭素皮膜抵抗を発明したのが理研を作った大河内博士と言うことはあまり有名ではないけど、炭素皮膜抵抗の本家本元が理研であって、その理研電具がこの抵抗を作らなくなったというのが残念なことだと思う。)それを1本1本銅箔で巻き、それにアルミ箔を被せてまき、更に熱収縮チューブで被覆する。銅箔にはアース用の線を半田付けしておく。
 後で後悔するとイヤなので、一応信号が流れるだろうとおぼしきパーツは全てこのようにシールドし、しかも全部アースを落とした。確かにこれをやるとやらないでは大きな違いがあって、苦労は報われたのだけど、あまり楽しい作業ではなかった。



オリジナルと違うところは以下

1.電源トランスをオリジナルではEIコアであったのを、手持ちのトロイダルとカットコアに変更。
2.オリジナルで省略されていた電源フィルターを復活
3.信号系抵抗を全てシールド、アースに落とす
4.コンデンサを出力段を10000µFから手持ち全てを投入して22000µF×2=44000µFに増量
5.電源ケーブルをインレット使用
6.電源スイッチにサーキットブレーカを採用し、電源ヒューズを省略

c0021859_17592295.jpg と言うわけで、とりあえず完成にこぎ着けて、音出し。
 こういう場合、直後の評価は全く当てにならないのだけど、低域は豊かになり伸びがある。
 これから2週間のエージングを経て大きく変化をしたのは当然なのだけど、それまでメインだったナショナルセミコンダクタのLM3886のBTLアンプに比較する。
 これは、音質の定評のあるこの素子を、できるだけ軽めの負帰還で動作させているもので、どうもこの3886は負帰還量によって大きく音が変化するようで、軽ければ軽いほど軽快かつ自然な、フレッシュな感じになる。通常の扱いやすいゲインにするための負帰還量では大人しめ活気のない音になってしまう。
 そんなわけで、このアンプの負帰還量はゲインをパワーアンプとしては大きめ(大きすぎ?)の30㏈以上に設定してある。
 このアンプと比較すると、音像のカチッとした感じは3886の方が感じるのだけど、いや、30分も聴いているとこの安井式アンプの方が音楽以外の(例えばホールトーンとか、会場のアンビエンスとか)がたくさんきこえるので、その中から音像をシャープに結ぶために控えめにきこえただけだった。
 そして力強い拍手のリアリティーは見事、各会場のボリューム感を出しつつ拍手に包まれる感じが会場のライヴ感を感じさせる。この音が不自然だったりホワイトノイズのようだったり、子供の手のようだったりしてはいけない。個人的には再生音の評価ではこの拍手の音にはこだわりたい。
 今回の安井式アンプは音像は確かに感じつつ、奥行きが全然違う。位相のずれを最小限にとどめた結果か。
 更にこちらは正真正銘完全対称の回路である(と言っても、金田式とは全然音が違いますけど)YAMAHAのA-S1000と比べると、YAMAHAの方が更にハイスピードではあるのだけど、自然さでは圧倒的に安井式。NON-NFBの効果も大きいのではないか。
 その音の違いの原因を探る事を、そして更にブラッシュアップをやってみたい。

by yurikamome122 | 2015-06-03 18:00 | オーディオ | Comments(0)

スピーカーシステムのネットワークの改善とそれらの考察

c0021859_15595958.jpg 改造に改造を重ねた自作スピーカー。
 ユニットはと言うと、ウーハーがPeerlessの830869にツイーターはDayton Audio のPT2C-8。ツィーターは元はAudaxのW034X0だったのを変更。
 ウーハーの後ろには5kgの錘を背負ってます。
 またはこの重さは約40kg。ウーハーのユニットの廻りに見えるフランジでこの40kgがウーハーにかかるような仕掛けになっています。
 特許出願中。
 ネットワークは12dB /octですが正相で接続。この効果は大きかった。

 ところで、スピーカーシステムのネットワークは、12dB/octだとクロスオーバー周波数でウーハー、ツイーターがそれぞれうまく音楽信号を分担し図のように電圧和特性は平坦に一致するわけです。
 また、位相がウーハー側は180度遅れ、ツイーター側は180度進んでしまうので、ツイーターを極性を反対にすると一致する。それが下の図。
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 これは連続正弦波を前提にしたもので、音楽でも長く続く音ならばこの通りになることもあるのだろうけど、ところが、音楽信号は刻一刻様々な音が飛びだし、変化をして長く続いた状態というのはあまりない。立ち上がりの早い音もあるわけです。で方形波を入れてみるとどうなるか。
 それが下の図。
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 図の赤線がツイーター、青線がウーハー。そして緑線が両方あわせた和特性。入力の方形波とは似ても似つかない波形になっている。
 これは、ツイーター側が位相が進み本来あるべき反応からやや早い反応になりつつ、電圧の下降が前のめりの波形になっていて、逆にウーハー側が位相が遅れるために緩慢な反応になるため。
 じつは、よくありがちなスピーカーシステムの12dB/octのネットワークはこんな反応をしていたわけです。
 マルチウエイの音が中域の張り出しがやや上品に、しっとり大人しく感じる原因がこのへんにあったのかも知れない。
 これ、MJ誌で安井先生が去年詳しく記事にしておいでの話。
 多くの2WAY以上のスピーカーはこんなふうにクロスオーバー付近では全然違う音を聴いていたんだというこの話、じつはこれ、いい音だと思って聴いていても全然違う音の波形を聴いていたんだという大変ゆゆしき事なのではないかと思うのです。

 それを改善する方法として安井先生が提唱をしている12dB正相型のネットワーク方式を去年このスピーカーに搭載した。
 波形の乱れる原因がツイーター側では俊敏な反応をして、ウーハー側では緩慢な反応をするのが原因だったので、ツイーター側をカットオフを低域側にずらし、ウーハー側を高域側にずらすことにより、およそ音圧を近似にすることが可能。
 但しその際は12dB/octであろうとも正相接続とする。
 その方形波のシミュレーションが下の図。赤線がツイーター、青線がウーハー。そして緑線がその和特性。
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 電圧和特性はこの下。
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 若干の乱れがあるのだけど、ほぼ良好な再現性になっている。
 その電圧特性の結果は、更にその下。電圧和特性で±1.5dB程度のうねりが出るのだけど、位相特性もおおむね良好なネットワークとなる。
 これはあくまでネットワークの特性で、実際音が出たときの位相のずれはユニットや箱などに依存します。
 システム全体はこの下。
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 低域でうねっているのは部屋の特性なので悪しからず。
 聴感上は大きな収穫で、メガネのレンズを拭き直したときのような爽快感が音楽から感じるのです。全体的なノイズレベルが下がったように感じるのはまるでアンプのグレードが一ランクも2ランクも上がったような感じで、音楽の荒々しさと躍動感が見違えて再現され、残響音を豊かに感じ臨場感が増して、そして更に嬉しいのは音楽が活き活きと踊り出したよう。
 ただ、このネットワーク、インピーダンスの補正回路は必須です。それもクロスオーバー付近はきちんと適切に処理されていることが前提です。
 実験で失敗する人は補正回路の設定がうまくいかないことが多いようです。
 12dB/octの通常のネットワークはこれほどまでに音質を変化させていたのだと言うことを実感したのでした。

 で、ここまで来るとタイムアライメントまで調整したくなるのは人情というもので、先ずは現状を測定。

 アンプをスピーカーに繋いだままスピーカーシステムのネットワークの端子と先ずはウーハーの端子にオシロのプルーヴを繋いでクロスオーバー周波数をトーンバーストで入れてみる。、次にツイーターの端子に繋いで同じように測定。
 それが写真の図。上がツイーター、下がウーハー。
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 単発サイン波という方法もよく知られた方法としてあるけど、トーンバーストの方がいろいろとわかることが多いと言う安井先生の指摘もあり、それで試しているわけだけど。波形の出始めが崩れるのは、ウーハーはネットワークを通すと位相が遅れて、ツイーター側が進むためと言う原因が大きいと思う。

 現状が12dB/octの通常の-6dBクロスのネットワークで、聴感上で位置を決めたもの。5㎝で決めてある。
 計算上では本当はもうあと3.5㎝前に出すべきなのだけど、聴いた感じはここが一番だった。そのままユニットの位置変更なしでこのネットワークで測定した結果なのです。
 プルーヴをユニット端子側の極性を逆にしてしまったため位相が反対になっているように見えるのはお許しを。

 波形を見るとツイーターの方が1/5波長ほど先に音が出ている。ということで、その分の位置の補正をしてみる。
 2000Hzの波長は340/2000=0.17ということで17㎝。といううことは17×1/5=3.4㎝ということになり、12dB/octのネットワークで180°分の位相のずれとほぼ一致する結果となる。その分のスペーサーを作ってウーハーを前に出してみた。
 その測定結果がどうも見つからないので掲載は見送るので悪しからずご容赦を。

 さてその聴感上は。
 明らかにこちらの方が奥行き感と分離がよいのです。響きは奥行きだけでなくスピーカーの上に、横に更に拡がり、そして中音の厚みが増して立ち上がりが鮮明で、スパーンと抜ける。何よりスピーカーから音が出ていないその感じが嬉しい。
 以前の12dB/octの通常の-6dBクロスのネットワークで、計算値よりも約3㎝後退したところの方が聴感上好ましく感じたのは、ネットワークによる歪みを何とか目立たなくしたその点であったわけでした。今回、このネットワークの導入によりその必要がなくなり、ほぼ計算値前後の、ユニットに起因するのかどうかわかりませんが若干の補正を必要とはするけど計算通りでよい結果が出せたというわけ。
 そして、歪み成分などにより打ち消し合うところが減った分音が開放的に自然に鳴るようになっている。まるでもぎたてのトマトをかじって、フレッシュな香りと酸味を感じながら「そうそう、トマトってこういう味だったよね」って感じ。

 ブルックナーの第5交響曲で、録音の評判が悪いEMIの国内盤、残響の豊かなドレスデンのルカ教会でヨッフム指揮のドレスデンのシュターツカペレの22型の弦の編成で、増管された3管編成の大オーケストラが4楽章の最後、ホルンとバストロンボーンが雄叫びを上げて、トランペットがクレッシェンドしながら上り詰める、その後に分厚いオーケストラがフォルテシモで雷のように轟く中で、最後の最後、フルートの澄んだ響きが大音響の中で密やかに残響を伴って上昇音型を奏でるところは、天使が空に昇ってゆくようで、ここはこうあるべきだったんだ。こうきこえるはずのところだったんだ!!。
 スクロバチェフスキの明らかに操作したような演奏ではなく、また、ブロムシュテットのゲヴァントハウス盤のように編成を現代風に刈り込んだわけでもなく、20世紀のあの当時の普通に演奏してこれがきこえる。

 これだよね、オーディオは。

by yurikamome122 | 2015-02-09 16:17 | オーディオ | Comments(1)