安井式40WパワーアンプとAccuphaseのP-6100の対決
パワーアンプの製作で、安井式の選択の成功だった。
あるイベントで、パワーアンプのみ安井式にしてデモンストレーションを行った。多くがオーディオに興味がある人しか来なかったそのイベントでは、おおむね好評というレベルではなく、足を運んでくれた人は皆一様に予想以上のクオリティーに驚いていた。
あるマニアが「そのアンプ、貸してくれませんか」というお話。その方のお宅で、アキュフェーズのアンプとタンノイの高級スピーカと組み合わせると言う機会を得た。
ラインナップはパワーアンプがP-6100、プリアンプがC-2420。スピーカーはタンノイのカンタベリー。
基本的にバランス伝送で接続されていて、スピーカーはバイワイヤリングで接続されている。
今はハイエンドはバランス伝送が常識的な流行と言うことになっている。(実はバランス伝送というのは家庭用のケーブルが長くても数メートルというオーディオシステムでは、デメリットの方が大きいと言うことをあまり知られていないのは、ものを作る側で、しかも高いものを売りたい方としてはありがたいことだと思う)
始めに聴いた印象で、このシステムのスケール感は快感を感じさせる。
伸びやかなきめの細かい音も色気を感じたし、ピアノの共鳴による基音より低い音も雄大に響いていて、それでいて立ち上がりがよかった。でもハイエンドによくありがちな1枚ベールをかぶった印象はやはりここでもあった。
そんなシステムのおよそ100万円のパワーアンプとの対決なのだけど、安井式のパワーアンプはアンバランス伝送なので、アキュフェーズのプリアンプのC-2420はアンバランスの出力も装備されているのでいるので、こちらを使って接続。
カンタベリーは能率が8Ωで96dBもあるので、スピーカーから2~3mのリスニングポジションで40Wの出力でもダイナミックレンジとしては生のオーケストラ以上の音が出せるので、全く出力としては問題なし。
重さも大きさも全然違うこの対決は大変楽しみだったけど、結果は惨憺たるものだった。
自宅ではスピーカーの外まで拡がっていた音場が全く拡がらないどころか奥にくすんでしまっていて、しかも詰まった印象。
アキュフェーズできこえていたピアノのハンマーが弦を叩くその感じが全くしない。
よくハイエンドにありがちな、スケール感はあるのだけど1枚ベールをかぶったそんな感じが更にひどくなったような印象だった。ホールトーンが自然に引かないどころか、きこえるべきホールトーンがない。
明らかに自宅で鳴らすのとは、出張デモで鳴らすのとなり方が違う。
実験用に用意していったコモンモードフィルターをプリとパワーの間に挿入したところ、大きな改善があったものの、それでもアキュフェーズの足下に及んだとは到底言いがたいのは変わらない。自宅で聴いたときのようなホールに包まれるような感じが全くしない。
アンプを自宅に持ち帰りいつもの環境で試してみると、さすがにカンタベリーのスケール感にはかなわないのだけど、透明感と立ち上がりでは明らかに我が家の環境の方が勝っていると思う。
安井先生にそのことを話してみたところ、「プリアンプも対応していないと、音は拡がりませんよ」とのこと。
この経験は大きかった。音をよくする秘密が一つ解った気がした。
なぜたった数メートルのケーブルに大金を投資しなければいけないのか、なぜ試聴したときと買ったときでは音が違うのか、その原因の大きなものを見つけた気がした。
そして、それは後の実証実験でたぶん正しかった。
by yurikamome122 | 2015-06-16 05:59 | オーディオ | Trackback | Comments(0)